2019年5月14日火曜日

もうすぐ絶滅するという煙草について(本の感想)

「もうすぐ絶滅するという煙草について」は、キノブックスが20192月に出版した煙草に関するアンソロジー。センセーショナルなタイトルだが、内容としては芥川龍之介や夏目漱石から、浅田次郎やなぎら健壱まで新旧様々な42人の作家さんが、各人の煙草に対する思いを綴るエッセイ集になっている。自分は煙草を吸わないので、愛煙家擁護をしたいわけでも嫌煙家に賛同したいわけでもないが、共通のテーマでここまで違うことが書けるのか、と驚くとともに新しい作家さんとの出会いをくれたいい本だった。


個人的に感心したのは、煙草が共同体をつくるために必要な儀式、という内田樹さんの作品。気体または液体を共有するという友好儀礼が世界中で見られ、お酒や煙草は見ず知らずの人にもらっても失礼ではない(むしろ薦められて断る方が失礼)という話は、大いに頷けるものがあった。これ以外にも、煙草ジョーク集や30年後の禁煙等、煙草に対する愛憎織り交ぜたお話が満載で、愛煙家にも嫌煙家にも楽しめる内容だと思う。ここまで愛されている煙草が本当に絶滅するか、読んだ後に考えてみるのも面白い。

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